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仮想通貨とは
ICOとは
ICO資料
ICO評価
「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第11回)平成30年(2018年)12月14日
金融庁報告案 5.ICOへの対応(抜粋)
(1)ICO の現状と対応の方向性
ア.ICO による資金調達の現状
ICO(Initial Coin Offering)とは、企業等がトークンと呼ばれるものを電子的に発行して、公衆から法定通貨や仮想通貨の調達を行う行為を総称するもの。

2017 年の全世界における ICO による資金調達額は約 55 億ドル、2018 年は1月から 10 月末までで約 167 億ドルとされている。

こうした ICO については、グローバルに資金調達ができる、中小企業が低コストで資金調達ができる、流動性を生み出せるなど、既存の資金調達手段にはない可能性があるとの評価もなされている。

一方で、以下のような問題を指摘されることも多い。
・ ICO を有効に活用したとされる事例があまり見られない。
・ 詐欺的な事案や事業計画が杜撰な事案も多く、利用者保護が不十分である。
・ 株主や他の債権者等の利害関係者の権利との関係も含め、トークンを保有する者の権利内容に曖昧な点が多い。
35 ICO については、明確な定義がないため、例えば、投資性を有するものについては STO(Security Token Offering)等の他の呼び方が一般的となる可能性も含め、今後の展 開は必ずしも見通し難い面があるが、本研究会で検討された内容は、呼び方の如何を問 わず、電子的に発行されたトークンを用いて資金調達を行う行為全般に妥当するものと考えられる。
36 例えば、coindesk 等の民間情報サイトが存在する。
37 出所:coindesk.com。なお、2017 年の全世界における IPO(Initial Public Offering:新規の株式公開)による資金調達額は約 1,880 億ドルとされている(出所:EY GlobalIPO Trends 2017 4Q)。


・ 多くの場合、トークンの購入者はトークンを転売できれば良いと思っている一方、トークンの発行者は資金調達ができれば良いと思っており、規律が働かず、モラルハザードが生じやすい。

ICO は、その設計の自由度が高いことから様々なものがある。

トークンの購入者の視点に立った場合の分類
・ 発行者が将来的な事業収益等を分配する債務を負っているとされるもの(投資型)
・ 発行者が将来的に物・サービス等を提供するなど、上記以外の債務を負っているとされるもの(その他権利型)
・ 発行者が何ら債務を負っていないとされるもの(無権利型)

イ.ICO に係る規制の現状
諸外国では、一部の国で ICO を禁止する動きもみられるが、多くの主要国では、ICO のうち、投資性を有すると認められるものについては、既存の証券規制の適用対象となり得る旨を明確化し、注意喚起や規制に基づく行政上の措置等を実施している38。

我が国においても、2017 年 10 月に、行政当局より、利用者に対して、ICO のリスクについて注意喚起がなされるとともに、事業者に対して、ICOの仕組みによっては、金融商品取引法や資金決済法の規制対象になり得る旨が示されている。具体的には、以下のような適用関係となると考えられる。

・ 金融商品取引法との関係では、ICO において発行されるトークンの購入者が発行者からの事業収益の分配等を期待し、かつ、下記①又は②を満たす場合、当該トークンが表章するとされる権利(以下「トークン表示権利」)は金融商品取引法上の集団投資スキーム持分39に該当すると考えられる。
① 法定通貨で購入されること。
② 仮想通貨で購入されるが、実質的には、法定通貨で購入されるもの
と同視されること。
・ 資金決済法との関係では、ICO において発行されるトークンが、下記 ①又は②を満たし、かつ、法定通貨建て40でない場合、当該トークンは 資金決済法上の仮想通貨に該当すると考えられる。
① 不特定の者に対して代価の弁済に使用でき、かつ、不特定の者を相 手に法定通貨と相互に交換できること。
② 不特定の者を相手に仮想通貨と相互に交換できること。

ウ.ICO への対応の方向性
ICO については、様々な問題が指摘されることが多い一方で、将来の可 能性も含めた一定の評価もあることを踏まえれば、現時点で禁止すべきも のと判断するのではなく、適正な自己責任を求めつつ、規制内容を明確化 した上で、利用者保護や適正な取引の確保を図っていくことを基本的な方 向性とすべきと考えられる。
また、ICO については、技術上、トークンの流通を図ることが容易であ るなどの特徴が認められるところであるが、同様の経済的機能やリスクを 有する場合には同様の規制を適用することを基本としつつ、ICO の機能や リスクに応じた規制の対象とすることが重要と考えられる。

38 こうした対応に加えて、一部の国では、投資性を有するとは認められない ICO についても、それに特化した規制を検討する動きもみられる。
39 金融商品取引法において、出資又は拠出をした金銭を充てて行う事業から生ずる収益の配当又は当該事業に係る財産の分配を受けることができる権利と規定されている。


(2)ICO に係る規制の内容
ア.投資に関する金融規制を要する ICO に係る規制の内容
ICO のうち、投資性を有するもの41には、以下のような特徴があると考え
られる。
・ トークン表示権利は、トークンとともに電子的に移転するものと考えられており、事実上の流通性が高い。
・ 設計の自由度が高く、トークンの発行時・発行後ともに、発行者と投資家との間の情報の非対称性が大きい。
・ 対面によらずに、インターネットを通じて投資家を募るため、トークンの発行者や販売者による投資家へのアプローチが容易である一方、投資家が詐欺的な事案等を判別しづらい。
こうした特徴は、いずれも投資家にリスクを生じさせるものであることから、以下のような仕組みが必要となると考えらえる。
・ 発行者と投資家との間の情報の非対称性を解消するための、継続的な情報提供(開示)の仕組み。
・ 詐欺的な事案等を抑止するための、第三者が発行者の事業・財務状況についてのスクリーニングを行い得る仕組み。
・ 不公正な行為の抑止を含め、トークンの流通の場における公正な取引を実現するための仕組み。
・ 発行者と投資家との間の情報の非対称性の大きさ等に応じて、トークンの流通の範囲等に差を設ける仕組み。

41 トークンの購入者が事業収益の分配等を期待する、いわゆるエクイティ型のスキームだけではなく、一定の利息の支払いと元本の償還を期待する、いわゆるデッド型のスキームについても、投資に関する金融規制の対象とすべきではないかとの意見もあった。
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なお、上記(1)で述べたとおり、現行の金融商品取引法においては、
トークン表示権利が仮想通貨で購入された場合には、必ずしも規制対象と
はならない。
しかしながら、購入の対価が私的な決済手段である仮想通貨であったと
しても、法定通貨で購入される場合とその経済的効果に実質的な違いがあ
るわけではないことを踏まえれば、仮想通貨で購入される場合全般を規制
対象とすることが適当と考えられる42。また、このことは、トークン表示
権利の購入に限らず、集団投資スキーム持分の購入についても、同様に妥
当するものと考えられる43。
(ア)情報提供(開示)の仕組み
例えば、金融商品取引法においては、開示規制の対象となる有価証券
が規定されており、その中でも広く流通する蓋然性が高いと考えられる
有価証券(第一項有価証券)とその蓋然性が低い有価証券(第二項有価
証券)とに分けられている。トークン表示権利は、事実上多数の者に流
通する可能性があるため、前者(第一項有価証券)と同様に整理するこ
とが適当と考えられる。
また、金融商品取引法においては、有価証券の募集(公募)に該当す
る場合には、有価証券届出書(発行開示)や有価証券報告書(継続開示)
のような公衆縦覧型44の開示規制が課されている。一方で、有価証券の公
募に該当しない場合(私募の場合)には、転売制限がかかることを前提

42 仮想通貨に限らず、金銭類似の対価性を有するものによる購入全般が規制対象とな
り得るようにしておくべきではないかとの意見もあった。
43 集団投資スキーム持分の購入にとどまらず、同様の機能・リスクを有する取引には、
同様の規制を適用するという観点から、金銭に代わって仮想通貨が用いられる場合に、
金銭が用いられる場合と同様の取扱いとしていくべき取引がないか、取引の実態にも
留意しながら、検討していく必要があると考えられる。
44 ICO については、会計のルール等も必要との意見があった。
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として、公衆縦覧型の開示規制の対象外となる。トークン表示権利につ
いても、これと同様に整理することが適当と考えられる45。
投資性を有する ICO に係るトークン表示権利は、これまでのところ、
投資対象を一定の限定された範囲の事業・資産とし、当該事業等から生
じた収益を分配することを内容とするものが一般的であるが、投資対象
の範囲が発行者の既存事業に及び、その収益を分配するものも想定され
る。トークン表示権利の開示内容については、既存の開示規制と同様に、
その性質に応じた形で整理していくことが適当と考えられる。
(イ)第三者による事業・財務状況のスクリーニングの仕組み
投資家が適切な投資判断を行うためには、キャッシュフローの裏付け
となる事業の実現可能性等が客観的に確認されることが重要である。既
存の資金調達では、例えば、IPO に伴う元引受けでは主幹事証券会社(第
一種金融商品取引業者)が、株式投資型クラウドファンディングでは仲
介を行う業者(第一種少額電子募集取扱業者等)が、それぞれ法令上の
審査義務を負い、自主規制規則において具体的な審査項目が定められて
いる46。
ICO についても、こうした対応の必要性が変わるものではなく、詐欺
的な事案の抑止や内容が曖昧なトークン表示権利の発行・流通の防止の
観点からも、第三者が発行者の事業・財務状況を審査する枠組みを構築
することが適当と考えられる。
また、例えば、金融商品取引法においては、有価証券を取り扱う業者
は、取り扱う有価証券の流通性の高低に応じ、第一種金融商品取引業者
と第二種金融商品取引業者に分けられ、業規制が課されている。

45 トークン表示権利の販売を適格機関投資家私募(いわゆるプロ私募)等の形態で行う
場合には、プロトコルによる禁止等を含め、転売制限の実効性を担保することが重要と
考えられる。
46 株式投資型クラウドファンディングの場合、インターネットを通じて非対面で行わ
れる資金調達であるという特性を踏まえ、発行者や事業の実在性、事業計画の妥当性等
についても審査が行われている。
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ICO におけるトークン表示権利を取り扱う業者は、事実上多数の者に
流通する可能性がある権利を取り扱うことから、前者(第一種金融商品
取引業者)と同様に整理した上で、当該業者に対し、発行者の事業・財
務状況の審査を適切に実施していくことを求めることが適当と考えら
れる。
なお、ICO においては、発行者が自らトークン表示権利の取得勧誘を
行ういわゆる自己募集が多いとされる。詐欺的な事案の抑止等の必要性
を踏まえると、第三者による審査を経ることが最も望ましいが、集団投
資スキーム持分等については、第二種金融商品取引業者としての登録を
受けることを前提に自己募集が認められていることも踏まえ、トークン
表示権利の自己募集についても、禁止するのではなく、適切に規制の対
象としていくことが考えられる。
具体的には、集団投資スキーム持分等の自己募集と同様に、発行者に
業登録を求め、広告・勧誘規制やトークン表示権利の内容等についての
説明義務等の行為規制を課すことを通じて、一定の投資家保護を図って
いくことが適当と考えられる47。
(ウ)公正な取引を実現するための仕組み
例えば、株式の流通の場や形態としては、自主規制を含む規制の柔構
造化により、金融商品取引所、PTS(Proprietary Trading System:私設
取引システム)48、特定取引所金融商品市場(いわゆるプロ向け市場)、
認可金融商品取引業協会である日本証券業協会(以下「日証協」)の自主
規制規則に基づく株主コミュニティ銘柄の店頭取引、証券会社(第一種
金融商品取引業者)におけるその他の店頭取引等が存在している49。

47 トークン表示権利の自己募集を業規制の対象とすることにより、行政当局が必要に
応じて監督上の対応を行うことも可能となる。
48 現在、株式 PTS では、非上場株式の取扱いは認められていない。
49 このほか、制度上は、日証協が開設可能な店頭売買有価証券市場(旧ジャスダック。
現在は存在しない)及び日証協の自主規制規則に基づく店頭取扱有価証券(フェニック
ス銘柄。現在は指定なし)の店頭取引が存在する。
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トークン表示権利については、その特徴を踏まえたとしても、これら
以外に、独自の流通の場や形態を予め用意すべき特段の理由はなく、ま
た、例えば、上場50を制度的に禁止するなど、これらの流通の場や形態の
一部を利用できないようにすべき特段の理由もないと考えられる51。
また、トークン表示権利の取引について、公正な取引の実現の観点か
ら不公正な行為を抑止する必要性は、有価証券の取引と変わるものでは
ないと考えられる。したがって、有価証券の取引に適用される不公正取
引規制については、基本的にはトークン表示権利の取引にも同様に適用
することが適当と考えられる52。
ただし、インサイダー取引規制については、有価証券の取引の場合に
は、重要事実が予め類型化され、その公表に関しては金融商品取引所の
自主規制規則に基づく会社情報の適時開示制度の存在を前提として規
制が設けられている53。一方で、トークン表示権利については、その設計
の自由度が高い中で、何が投資家の投資判断に著しい影響を及ぼす重要
事実に該当するかは現時点で明らかであるとは言い難い。
このため、トークン表示権利の取引へのインサイダー取引規制の適用
については、事例の蓄積や適時開示の充実等が図られた後に改めて検討
することが適当と考えられる。

50 一般に、ICO において発行されたトークンが仮想通貨交換業者で取り扱われることを
もって「上場」と呼ばれることがあるが、金融商品取引法上の金融商品取引所への上場
とは全く意味合いが異なることに留意が必要である。
51 金融商品取引所に上場されるトークン表示権利の発行は、当座は見出し難いと考え
られるが、トークン表示権利については、今後も新たな形態での流通が生まれる可能性
も考えられることから、取引の実態を注視していく必要があると考えられる。
52 金融商品取引所に上場されていないトークン表示権利であっても、事実上の流動性
が高く、取引を通じて価格形成が行われるものである以上、相場操縦に相当する行為
(不当な価格操作)を禁止することも考えられるのではないかとの意見もあった。
53 脚注 25 で述べたとおり、金融商品取引法におけるインサイダー取引規制は、上場会
社等に関する未公表の重要事実を知った会社関係者が、当該重要事実の公表前に、当該
上場会社等の有価証券(株式、社債等)の売買等を行うことを禁止しており、「会社関
係者」や「重要事実」の範囲が、法令上明確に定められている。
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(エ)トークンの流通の範囲に差を設ける仕組み
例えば、未公開株詐欺が社会問題となってきた非上場株式については、
日証協が、自主規制規則により適格機関投資家以外への勧誘を制限して
おり54、一般投資家に広く流通することは想定されていない。
ICO についても、詐欺的な事案が多いなどの指摘があることを踏まえ、
例えば、金融商品取引所に上場されている場合のように、第三者による
適切な審査を経ているなどの利用者保護の観点からの特段の措置が講
じられていない限り、トークン表示権利の勧誘55を非上場株式の場合と
同様に制限し、一般投資家への流通を一定程度抑止することが考えられ
る56。また、トークン表示権利の事実上の流通性の高さを踏まえれば、自
己募集の場合にも同様に勧誘を制限することが適当と考えられる。
イ.決済に関する金融規制を要する ICO に係る規制の内容
上記1.(3)で述べたとおり、仮想通貨交換業者においては、利用者保
護や業務の適正かつ確実な遂行に支障を及ぼすおそれがある仮想通貨を取
り扱わないための措置を講じる必要があると考えられるところ、仮想通貨に
該当するトークンであってもその必要性が変わるものではない。

54 日証協は、制限の趣旨について、非上場株式は「ディスクロージャー及び会計監査が
求められておらず、投資判断に必要な情報が適切に提供されているとは言い難いこと
から、本協会では、証券会社が投資者に対して非上場株式の投資勧誘を行ってはならな
いこととしている」としている。なお、例えば、以下の勧誘は制限されていない。
・ 日証協の自主規制規則に基づく、店頭取扱有価証券(フェニックス銘柄)の勧誘
・ 日証協の自主規制規則に基づく、株主コミュニティ銘柄のコミュニティ参加者への
勧誘
・ 株式投資型クラウドファンディングの実施時における勧誘
55 脚注 18 で述べた仮想通貨の取引の場合と同様に、ICO においては、発行者や販売者
がいわゆるターゲティング広告やアフィリエイト広告を通じて投資家を誘引する事例
も見られる。
56 発行者と購入者の仲介を行う者に第一種金融商品取引業者並みの規制が、自己募集
を行う者に第二種金融商品取引業者並みの規制が、それぞれ適用されることを前提と
した上で、例えば、自主規制規則で開示規制の対象外となる少人数私募を認めないなど
の対応が図られれば、必ずしも一般投資家への勧誘を制限する必要はないと考えられ
るのではないかとの意見もあった。
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このため、仮想通貨に該当するトークンを含め、発行者が存在する仮想通
貨については、利用者保護の観点から、仮想通貨交換業者57に対し、発行者
に関する情報、発行者が仮想通貨の保有者に対して負う債務の有無・内容、
発行価格の算定根拠等を顧客に提供することを求めることが適当と考えら
れる58。さらに、ICO の場合には、これらに加え、発行者が作成した事業計画
書、事業の実現可能性、事業の進捗等の情報についても、その客観性・適切
性59に留意しつつ、顧客に提供することを求めることが適当と考えられる60。
なお、ICO については、詐欺的な事案や事業計画が杜撰な事案が多い、と
の指摘があることから、仮想通貨交換業者においては、仮想通貨に該当する
トークンの取扱いに際しては、特に厳正な審査を行った上で、問題がないと
判断したもの以外は取り扱わない対応の徹底が求められる61。また、行政当
局においても、ICO については、トークンの購入者が自己責任で十分に注意
する必要があることについて繰り返し注意喚起を行っていくことが重要で

57 発行者が存在する仮想通貨については、発行者が業として当該仮想通貨を販売する
場合には、仮想通貨交換業に該当すると考えられる。一方で、仮想通貨交換業者が発行
者の依頼に基づき販売を行い、発行者がその販売を全く行わない場合には、発行者の行
為は基本的に仮想通貨交換業に該当しないと考えられる。
58 現行の資金決済法上、仮想通貨交換業者には、顧客に以下のような情報を提供するこ
とが求められている。
・ 利用者の取引判断に影響を及ぼすこととなる重要な事由を直接の原因として損失
が生ずるおそれがあるときは、その旨及びその理由
・ その他取引の内容に関し参考となると認められる事項
59 事業の実現可能性や事業の進捗等の情報を提供することにより、顧客に根拠のない
期待を抱かせないように注意する必要があるとの意見があった。
60 顧客への情報提供の内容の充実を含め、投資性を有する ICO に係る規制との差を生
じさせないようにしていく必要があるとの意見があった。一方で、例えば、発行者に対
して物品やサービスを要求できる権利は、物品やサービスを前払いで購入するもので
あり、有価証券に投資した者に対する保護とは異なる問題であるとの意見や、最低限の
消費者保護は必要となると考えられるが、抜本的に新たな枠組みを構築するのではな
く、既存の規制を厳格に適用した上で、問題事例があれば個別に対処して、消費者向け
に注意を喚起するというアプローチもあるとの意見もあった。
61 認定協会は、ICO に関する自主規制規則として、仮想通貨に該当するトークンについ
て、その内容の如何を問わず、対象事業の適格性・実現可能性の審査義務、販売開始・
終了時・終了後の継続的な情報提供の義務等を規定することを検討している。
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ある62。加えて、金融規制に基づく対応のみでは限界があることも想定され
ることから、消費者関連機関を含む関係者には、問題事案の性質に応じて、
利用者保護の観点から、適切な対応を講じていくことを期待したい。

62 ICO に関しては、国内で事業を行う発行者が、仮想通貨に該当するトークンを発行す
るとともに、国内の居住者向けにその内容や購入方法を宣伝しつつ、国内で無登録の海
外の業者を通じて当該トークンを販売している事例もあるとされており、監督上、無登
録営業についての適切な対応も重要と考えられる。なお、無登録業者との取引を原則無
効とする規定や裁判所による禁止・停止命令を可能とする規定を整備することも考え
られるのではないかとの意見もあった。
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6.業規制の導入に伴う経過措置のあり方
仮想通貨交換業への規制導入時には、施行前から業務を行っていた者に対し
て、施行と同時に業務の継続を認めないこととした場合には、利用者に混乱や
不利益を生じさせるおそれがあること等を踏まえ、一定期間、いわゆるみなし
業者として業務を継続し得る経過措置63が設けられた。
しかしながら、こうした経過措置については、その適用を受けている期間中
に、みなし業者が積極的な広告を行って事業を急拡大させた、との指摘や、多
くの顧客が、取引の相手がみなし業者であることやその意味を認識していなか
った、との指摘がある。
今後、本報告書に沿って、仮想通貨デリバティブ取引等について業規制を導
入する際に、仮想通貨交換業への規制導入時に設けられたようなみなし業者に
係る経過措置を設ける場合には、当該みなし業者に対し、以下のような対応を
求めることが適当と考えられる。
・ 業務内容や取り扱う仮想通貨等の追加を行わないこと。
・ 新規顧客の獲得を行わないこと(少なくとも、新規顧客の獲得を目的とし
た広告・勧誘を行わないこと)。
・ ウェブサイト等に、登録を受けていない旨64や、登録拒否処分等があった
場合には業務を廃止することとなる旨を表示すること。また、登録の見込み
に関する事項を表示しないこと。

63 具体的には、以下のような内容の経過措置が設けられた。
・ 法施行の際、現に新たに規制対象となる業務を行っていた者は、施行後6か月間は
登録なしに当該業務を行うことができる(ただし、規制対象業者とみなされ行為規制
の適用を受ける)。
・ 6か月以内に登録の申請をした場合には、6か月経過後も、当該申請について登録
又はその拒否処分や業務廃止命令を受けるまでは、上記と同様、規制対象業者とみな
され行為規制が適用される一方で、当該業務を行うことができる。
64 登録を受けていない旨の表示については、共通マークの策定等も含め、誰もが明確か
つ確実に分かる方法によることが重要との意見があった。
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なお、こうした対応に加え、みなし業者として事業を行う期間の長期化を
回避する観点から、行政当局において、適切な制度上又は監督上の対応につ
いて、引き続き検討していくことが期待される65。

65 具体的な対応策として、予見可能性を高めるためにも、みなし業者として業務を行う
ことができる期間について、一定の期限を設けることも考えられるのではないかとの
意見があった。
32
7.「仮想通貨」から「暗号資産」への呼称変更
仮想通貨交換業への規制導入時において、以下の理由により、資金決済法上
「仮想通貨」の呼称が用いられた経緯がある。
・ FATF や諸外国の法令等で用いられていた“virtual currency”の邦訳で
あること。
・ 日本国内において「仮想通貨」という呼称が広く一般的に使用されていた
こと。
一方で、最近では、国際的な議論の場において、“crypto-asset”(「暗号資
産」)との表現が用いられつつある66。また、現行の資金決済法において、仮想
通貨交換業者に対して、法定通貨との誤認防止のための顧客への説明義務を課
しているが、なお「仮想通貨」の呼称は誤解を生みやすい、との指摘もある。
こうした国際的な動向等を踏まえれば、法令上、「仮想通貨」の呼称を「暗
号資産」に変更することが考えられる。


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